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メトロポリタンのあとはクロイスターズへ
メトロポリタンのあとはクロイスターズへ_c0061496_12301790.jpg今日も旦那ママと出かけたマンハッタンの話です。旅行前の義母のリクエストは、美術館めぐりと夜景のふたつだけ、夜景鑑賞はリバーカフェでクリアするとして、美術館はメトロポリタンかMoMAに行くのかなぁなんて勝手に想像してたら、クロイスターズという名前が出てきました。

まずい、名前すら聞いたことない…。
ということで早速ガイドブックを開くと、「マンハッタンの北部のフォート・トライオン公園内にある中世ヨーロッパの作品を展示するメトロポリタンの別館」とありました。最寄り駅は地下鉄Aラインの190stと若干不便ですが、メトロポリタンを見学した当日に限りチケットは共通とあったので、セットで見学することにしました。

Cloisterとは英語で回廊とか修道院という意味がありますが、1938年に一般公開されたこの美術館は、その名の通りすばらしい回廊があります。


上の写真はキュクサの回廊から撮影したものですが、12世紀にピレネー山脈にあるサン・ミッシェル・ド・キュクサに造られた回廊の、バラバラになってしまった円柱の一部を収集して復元したのだそうです。写真の四角い塔も、キュクサの寺院にあったものを模倣して造ったそうですが、館内には礼拝堂もあり、中世美術と宗教のかかわりや、中世美術が建築の中でどのように置かれ、どんな機能を持っていたかなどもわかる仕組みになっているそうです。

この美術館、もともとはアメリカの彫刻家で美術収集家でもあったジョージ・グレイ・バーナードが、フランスの農場経営者や地方の知事などから買い集めた中世の彫刻や建物の石細工、円柱などを集めて展示したのが始まりなのだそうです。フランス革命ののち、旧体制の特権階級だった修道士たちが立ち去った教会や僧院は荒廃し、そこにあった石細工は売り飛ばされ、中にはぶどう棚として使われた円柱や、映画館として使われていた礼拝堂すらあったそうです(館内のランゴンの礼拝堂もそのひとつ)。

それを1925年にスタンダード・オイルの創立者ジョン・D・ロックフェラーの一人息子、ジョン・D・ロックフェラー・ジュニアが美術館ごと買い取ってメトロポリタン美術館に寄付(正確にはメトロポリタンにに資金提供?)したのだそうです。彼は自分のコレクションも追加して、フォート・ワシントン・アヴェニューにあった美術館が手狭になると、今度はフォート・トライオンにある自分の土地をニューヨーク市に公園として寄付し、その一角に現在のクロイスターズを建てたそうです。

偶然NHKでクロイスターズの特集を見た義母の説明によると、当時NYは大不況の真っ只中にあり、彼はしばしばここを訪れ、タペストリーの前で時間を過ごしたようです。NYの魅力を紹介するYukiiママさんのGetting Around in NYC with Yukiには、『高台から対岸にニュージャージーの森が見えます。ここから見える風景を生涯変えないために、石油王ジョン・D・ロックフェラーJr.はニュージャージー側の土地も買いとったそうです』とありましたが、よほどこの美術館を大事にしていたのでしょうね。

ちなみに彼は父親の事業を手伝いながら、世界恐慌の最中にロックフェラー・センターの建設にも資金提供をしたほか、一族と共にロックフェラー財団やロックフェラー大学を創立したり、国連本部の敷地を寄贈したりと、慈善活動にもかなりの力を注ぎました。また自然保護にも取り組み、ヨセミテをはじめアメリカの国定公園のために多くの土地を購入しては寄贈したそうです。ちなみに第41代アメリカ合衆国副大統領のネルソン・アルドリッチ・ロックフェラーは彼の息子なんですって。

すみません、また話がずれましたね…。美術品の写真は撮影禁止だったので、メトロポリタンのHPと、前述のYukiママさんのHP、それにMITSUKOSHIのHPでどうぞ。

美術館の目玉のひとつである「ユニコーンのタペストリー」は、1500年頃ブリュッセルで織られたそうです。ユニコーンはヨーロッパでは神聖な力と純潔の象徴なのだそうですが、誇り高く獰猛な獣で、神秘学的には様々な象徴として扱われ、処女の前にだけその姿を現すという伝説があるそうです。このタペストリーは狩人がユニコーンを追いつめ、生け捕るまでのシーンを7枚にわたって描いたのだそうですが、逃げたユニコーンが処女の膝の上に頭をもたせかけたときに捕獲される5枚目だけは、小さな断片しか残っていないそうです。

また中世後期に作られたフランスの珍しいタペストリー「9人の勇士のタペストリー」も、20年かけて復元されましたが、5枚しか残っていないません。ちなみに9人の勇士とは、異教徒のヘクトル、アレキサンダー王ジュリアス・シーザー、ユダヤ教徒のダビデヨシュア、ユダス・マカバイオス、キリスト教徒のアーサー王、シャルルマーニュ、ゴドフレー・ド・ブイヨンなのだそうです。(下線は現在残っている5点)

メトロポリタンのあとはクロイスターズへ_c0061496_1230260.jpg左はボンヌフォン回廊から見た、ゴシック礼拝堂の外観です。回廊の中の薬草園には、中世に実際に薬草として使われていた250種類以上の植物が植えられ、中にはぜんまいもありました。ここからはハドソン・リバーと、ジョージ・ワシントン・ブリッジが見えます。

下の写真は右がエントランス付近からの美術館の外観、右は帰り道にハドソン・リバーの方へ向かって歩き、フォート・トライオン公園内を散策した際に撮ったものです。

なお、地下鉄の190st.駅からエレベーターをあがって外に出たら、右手側に進んでください。まもなくフォート・トライオン公園の緑の看板のある入り口が見えますが、その右手側の道をまっすぐ進んだ方がわかりやすいかもしれません。明るい時間なら、帰り道はぜひ公園内を散歩してみてください。

メトロポリタンのあとはクロイスターズへ_c0061496_12302815.jpgメトロポリタンのあとはクロイスターズへ_c0061496_1231586.jpg



メトロポリタンのあとはクロイスターズへ_c0061496_12303947.jpg全く美術とは関係ないのですが、こちらはメトロポリタン美術館の敷地内(多分)にあったハナズオウの木です。木の幹に直接花が咲いているのには驚きました。義母曰く、「こんなにびっちりと花がついているのは珍しい」そうです。

なお火曜日に出かけたのは、メトロポリタンの日本語ガイドツアー(無料)が毎週火曜日に行われるとガイドブックにあったためですが、先ほどHPを開いたら、水曜日と金曜日にも日本語ツアーがあることが判明しました。Museum Highlights in Japaneseのスケジュールは、こちらでチェックしてください。


1時間ほどのツアーなので、もちろん広い館内を網羅することはできませんが、的を絞って作品の描かれた経緯や絵の中で表現されている意味、さらにその作品の前後に描かれた作品との比較など、専門家でなければわからない貴重な話を聞くことができました。

例えば印象派の画家モネが、水連や積みわらなど、同じモチーフの作品をたくさん描いたのは、晴れた日の朝、曇りの日の昼、というように何枚ものキャンバスを用意しておいて、異なった時間、異なった光の下で制作したためなのだそうです。また日本館では毎年何度か作品の入れ替えを行うようですが、ちょうどこの時期は季節柄、尾形光琳の『八ツ橋』が展示されていて、この作品のあとに描かれた根津美術館収蔵の『燕子花図』との違いを話してくれました。

ちなみにメトロポリタンは300万点の美術品を所蔵する世界でも最大級の美術館ですが、国営でも市立でもなく、私立なのだそうです。メトロポリタンは2度目の見学でしたが、自分がどの部屋にいるのかさえもまともにわからないというお粗末な状況だったので、次回はもう少し調べてから行こうとと思います。
by ny-cafe | 2005-05-13 13:43 | Let's go Manhattan