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Hancock Shaker Village
Hancock Shaker Village_c0061496_10555150.jpg旅行の話の続きです。日曜日は時間があったので、Hancock Shaker Villageに寄りました。ここは1783~1960年まで、実際にシェーカー教徒たちが生活していた場所で、アメリカにある19の代表的なシェーカーコミニュティの中で3番目に古いのだそうです。

18世紀の中ごろ、イギリスのマンチェスターで創設されたシェーカー教は、礼拝中に信者が震え、ぐるぐる回り、揺れる(Shake)ことからこの名前が付けられたそうです。

千年至福説(キリスト教の終末思想のひとつ、カトリック、東方正教会、プロテスタント等の伝統宗派はこの教義を公式に否定している)を信奉する彼らは、キリストの再来は彼らの指導者であるマザー・アン・リー(Mother Ann Lee)によって実現されたと信じ、迫害を受けながらも熱心に信者を集めたそうです。


t-mitsunoさんのブログ、t-mitsuno's blogによれば、教祖とされるマザー・アン・リーはもともとシェイキング・クエーカーズという、ラディカルなクエーカー分派の信者だったそうです。しかししばしば踊りと大声によって安息日を破り(直訳するとこうなるが意味のある行為と思われる…汗)、神を冒涜するとして投獄されたそうです。そしてマンチェスターでの14日間にわたる投獄生活の中でシェーカー教を開く啓示を受けた彼女は、その後信仰の自由を求めてアメリカに渡ることを決意し、1774年8月6日、8人の仲間とともにニューヨークに入港。1776年、NY州のAlbanyに近いWatervlietに土地を得て、共同生活と布教活動を始めたそうです。

その後1781~1783年にかけて、彼女はニューヨーク、マサチューセッツ、コネチカットに布教の旅に出かけ、翌1784年、Watervlietで永眠します。しかしその後も彼女の意志を継いだ指導者によって教義は維持され、ニューイングランド地方、ニューヨーク州、ケンタッキー州、オハイオ州、インディアナ州などでコミニュティが創設され、俗世から離れ、自給自足の生活を続けたそうです。シェーカー教は1830~1850年には6,000人もの信者を抱えるまでに成長し、最盛期にはコミュニティ内で大規模な農場を経営するなどして成功していたそうですが、産業革命などで次第に衰退し、現在はメイン州Sabbathday Lakeにわずかな信者を残すだけとなったそうです。

禁欲、生活共同、懺悔、男女平等、平和主義などを基本原理としたシェーカー教では、コミニュティ内の結婚も禁じられていたようです。またそこで生活する人々は質素で、労働によって高い精神性を保てると信じていたそうです。そして言葉ですら装飾することを嫌った彼らは、全てにおいて簡素であることを重んじ、無駄がなくシンプルで美しいシェーカー家具や工芸品を生み出したのだそうです。

私たちが訪れたHancock Shaker Villageは、1783年、シェーカー教への改宗者が寄付した土地に創設されたそうで、コミニュティの人口は1830年代に最も多く、6つの共同体に300人以上が住んでいたそうです。

◆煉瓦住居
Hancock Shaker Village_c0061496_515527.jpg左はコミニュティの中心的な建物、煉瓦住居です。ここで100人ほどの信者が、集団生活を営んでいたようです。1階には食堂と集会場があり、上の階が居住スペースとなっていたようです。地下にはキッチンがありました。

内部は真ん中の廊下を境にして左右が対称になっていて、男女が別れて生活をしていたそうです。左下の写真は集会場の入り口ですが、真ん中に柱があり、ここでも男女は左右分かれてドアをくぐったそうです。
Hancock Shaker Village_c0061496_6244493.jpgまたシェーカー教徒はものを壁に掛ける習慣があったようで、館内にはいたるところにフックが設けられ、ほうきや帽子だけでなく、使わない椅子までも吊るされていました。

シンプルで質素な生活を求めたシェーカー教徒ですが、この建物は木のぬくもりと美しいシェーカー家具が独特の雰囲気を作り出し、とても居心地がよかったです。ちなみにこの美しいシェイカー家具を作ることに魅かれ、シェーカー教に改宗する木工職人もいたそうです。
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Hancock Shaker Village_c0061496_1036414.jpgHancock Shaker Village_c0061496_72832.jpgHancock Shaker Village_c0061496_72198.jpg

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◆丸石納屋
Hancock Shaker Village_c0061496_10405991.jpg名前の通り、石で造られた円形の家畜小屋です。ここでは52頭の乳牛を飼育することができたそうですす。牛をつなぐためのリングですら、美しくデザインされていたのに驚きました。

藁を積んだ荷馬車は2階のドアから直接納屋に入ることができ、そこから藁を1階に下ろして央部分の乾燥棚に積み、外側に円形につながれた牛に効率よくえさをやるつくりになっていたようです。ちなみにフンは床に設けられた落としドアから地下に落とされ、肥料用に保存されたそうです。

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◆洗濯場/機械加工所
Hancock Shaker Village_c0061496_874913.jpgHancock Shaker Village_c0061496_88363.jpgこの日は機械加工所で、木工用の機械を動かすデモンストレーションをしていました。近くの池から引き込んだ水を、建物の地下に毎秒8ガロン流すことにより、動力を生み出していたようです。上射式水車から後にタービンに代わったそうで、動力を伝える回転ベルトがあちこちにありました。


◆その他Hancock Shaker Village_c0061496_1152154.jpg
Village内にはこのほか、兄弟団作業所、姉妹団の乳製品・織物作業所、学校、礼拝堂などの建物があります。オリジナルの建物は、コミニュティの最後の10年間に信徒によって壊されてしまったため、修復・改造されたり、他のコミニュティから移築したものも多いようです。

左は教室の様子。男女分離の教義に基づき、男子生徒は冬、女子生徒は夏に通ったそうです。机の上が開くようになり、中にものを入れられるようになっていました。
Hancock Shaker Village_c0061496_873554.jpg左は代表的なシェイカーの木工品、オーバルボックス(楕円形木箱)です。装飾を嫌い、極限までシンプルさを追求したシェイカー教徒ですが、「手は労働に、心は神に」というシェーカーの教えにふさわしく、サイドのあわせ部分のデザインが祈りを捧げる時の手の形になっているそうです。

様々な大きさのものがありましたが、お値段は少々お高め…。そのため買うのを断念しましたが、少し無理をしてでも買ってくればよかったと、本気で後悔しています。
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Hancock Shaker Village_c0061496_1149989.jpgなお、Village内には、カフェをはじめ、あちこちにシェーカースタイルの家具がありましたが、椅子は軽い上に座り心地も良く、シェーカー教徒はほとんどいなくなった今でも、木工家具メーカーで作り続けられているも納得です。

ちなみに、NYのメトロポリタン美術館でもシェーカー家具が展示されてるそうです。今までアメリカWingは興味がなかったためほとんど行ったことがありませんでしたが、次回はのぞいてみようと思います。


Hancock Shaker Village_c0061496_12122536.jpgということで、すっかり長くなりましたが最後にアクセス等について。Hancock Shaker Villageはマサチューセッツ州Pittsfieldの、Rt-20とRt-41の交差する辺りにあります。HPには住所の記載が「Route 20, Pittsfield, MA 01202」としかなく、地図もリンクされていなかったので出発前は心配しましたが、実際に行ってみたらすぐに分かりました。AAAメンバーは若干ディスカウントがあるので、入り口でカードを提示してみてください。

なお、今回私たちが泊まったのはVacation Village at Berkshiresというホテルです。音楽祭の会場からは少し離れますが、キッチンやジャグジーのついた長期滞在者向けのホテルで、1泊で帰るにはもったいない感じでした。ちなみに料金は$150ほど、音楽祭期間中は周辺のホテルが混雑し、値段も高くなるのでおススメです。


追記:時間の都合でランチはVillage内のCafeでとりましたが、ここは下手なお店に入るよりおいしくておすすめです。サンドイッチ類は色々パンが選べ、普通サイズとハーフサイズが用意されてるのも嬉しい限りです。
by ny-cafe | 2006-08-10 03:02 | Travel☆Travel